日本外科学会サテライトとして専ら心臓外科学の研究領域として 1976 年より 30 年の 歴史を刻んだ 「(旧)日本心筋保護研究会」は臨床的心筋保護法の導入と確立という初 期の使命を全うしたとの判断で 2006 年、3 月 29 日に終回となりました。しかしその後、 学術的視点のみならず医療安全の観点からも臨床的心筋保護法の重要性が再認識さ れるに至り、2019 年 9 月に新たに「日本心筋保護研究会: Japanese Society of Myocardial Protection」として再スタートいたしました。学術集会活動としては 2020 年 9 月 6 日第1回研究会(東京慈恵会医科大学 森田紀代造大会長:ハイブリッド型)開催 についで 2021 年 9 月 12 日第 2 回研究会(秋田大学山本浩史大会長:完全 WEB)を 開催致しました。また本研究会は関連学会、医療医育機関や企業等と連携して心筋保 護に関する多岐にわたる学術、教育、医療及び文化的・社会活動事業を展開すること を使命としており、これらの活動のため法人格として健全な財務状況と社会的信用を得 ることが不可欠との認識の下で理事会にて一般社団法人化を決議し、2021 年 4 月 1 日に登記が完了しました。
近年の心臓外科臨床において外科医の心筋保護離れは大きな問題と認識されており、
想定外の事態において心筋保護法が生死を分ける事態を招くことに深刻な警鐘が鳴ら
されております。一方、現代の臨床的心筋保護はかつてのような外科医の裁量に委ね
られた “ 術式の 1 要素 ”と異なり心臓手術チーム全体で管理すべき重要な総合的戦略
と考えられます。
「日本心筋保護研究会」はこのような社会的背景のもとで、心臓手術に関わる全ての部
門 領域を対象に心筋保護の研究を通じて社会に安全な心臓手術を提供することを目
的とした“多部門横断的研究会”として設立されました。
また一方で心筋保護法の学術的意義もいまだ失われておらず、最新の生化学・分子細
胞学的知見(Mitochondria 標的治療や虚血性・薬物性コンディショニングと内因性心筋
防御シグナル解明)等の基礎的研究をはじめ臨床的には多彩な心筋保護法の優劣と
選択のエビデンスと標準指針の構築、del Nido や Microplegia といった新規戦略の評
価など多くの検討課題が生まれております。このため将来的にも心筋保護研究は継続
が不可欠な研究領域であり、本会の学術的研究会としての意義も少なくありません。
このような経緯で設立した日本心筋保護研究会の目的は、関連 3 団体(日本心臓血
管外科学会 JSCVS、日本心臓麻酔学会 JSCVA、日本体外循環技術医学会 JaSECT)
と連携して広く心筋保護の基本知識と技術の啓蒙・教育と安全性向上・標準化を目指
し、併せて基礎的・臨床的研究を推進とすること、ひいては安全な臨床的心筋保護法を
確立して心臓外科の成績向上に貢献することであります。
森田 紀代造
(榊原サピアタワークリニック・東京慈恵会医科大学客員教授)
この度、本研究会の前身である(旧)日本心筋保護研究会(日本外科学会学術集会サテライト研究会 1976年〜2006年)から14年のブランクを経て、2019 年9月 『日本心筋保護研究会:The Japanese Society of Myocardial Protection』が再スタートすることは誠に感慨深い想いであります。さらに本研究会は関連学会、医療医育機関や企業等と連携して心筋保護に関する多岐にわたる学術、教育、医療および文化的・社会活動事業を展開すること目的に、2021年4月『一般社団法人:日本心筋保護研究会』に移行いたしました。本研究会の設立に際して理事長に就任させていただくことは大変名誉なことと感謝申し上げます。
かつて心臓外科領域の主要学術研究テーマであった心筋保護研究はその後、体外循環技術領域における実践上の技術的テーマへとシフトし、多くの外科医にとってすでに確立されたテーマとして認識されるに至りました。しかしこの結果、心臓外科医の心筋保護離れは不確実な心筋保護灌流や予期しない長時間心停止など想定外の事態において、心筋保護法が生死をわける事態をまねき、時に医療事故の要因となりえることに深刻な警鐘が鳴らされました。このため心臓血管外科学会等では医療安全の観点から心臓外科医に心筋保護理論の習熟が不可欠であることが再確認され昨今多くの教育講演で心筋保護が再び取り上げられる傾向にあります。
現代の臨床的心筋保護はかつてのような外科医の裁量に委ねられた『術式に包括される一つの要素』とことなり心臓手術チーム全体で適正に管理すべき総合手術戦略となったと考えられます。このような社会的背景のもと、本研究会は心臓手術に関わるすべての部門領域を対象に“心筋保護の研究を通じて社会に安全な心臓手術を提供するための多部門横断的研究会”として設立されました。
一方で心筋保護研究については学術的意義も未だ失われておらず、内因性心筋防御シグナル解明など基礎的研究をはじめ、臨床的にも多彩な心筋保護法の優劣とエビデンス・標準的臨床指針の構築など日々多くの検討課題が生まれており本会の学術的研究会としての意義も少なくありません。
今後この研究会が学術集会・教育講演・セミナー開催を通じて心筋保護の正しい理論と実践の基本教育の啓蒙、最新の基礎研究とUp-to-dateな臨床情報の共有、さらに将来の心筋保護法のエビデンス構築を目指した前向き臨床研究の推進や標準指針の策定などの社会活動を通して本邦の心臓手術の安全に資することを切望しています。
今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
役職 | 部門 | 氏名 | 所属/部署 | JSMP委員会 |
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代表理事 | 心臓血管外科 | 森田 紀代造 | 医療法人社団榊原厚生会 榊原サピアタワークリニック 東京慈恵会医科大学/心臓外科学講座 |
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特別顧問 | 心臓血管外科 | 髙本 眞一 | 社会福祉法人賛育会 賛育会病院/院長 | |
事務局長 | 臨床工学技士 | 吉田 雅人 | 心臓血管研究所付属病院/ME室 | |
理事 | 心臓血管外科 | 山本 浩史 | 秋田大学大学院医学系研究科/遠隔医療推進開発研究センター | 学術(研究/教育) |
理事 | 心臓血管外科 | 市川 肇 | 独立行政法人地域医療機能推進機構 大阪病院/心臓血管外科 | 広報/国際交流 |
理事 | 心臓血管外科 | 齋木 佳克 | 東北大学/心臓血管外科 | 倫理/医療問題検討 |
理事 | 心臓血管外科 | 築部 卓郎 | 神戸赤十字病院・兵庫県災害医療センター/心臓血管外科 | 学術(研究/教育) |
理事 | 心臓血管外科 | 國原 孝 | 東京慈恵会医科大学/心臓外科学講座 | 広報/国際交流 |
理事 | 心臓血管外科 | 別所 竜蔵 | 日本医科大学千葉北総病院/心臓血管外科 | 学術(研究/教育) |
理事 | 麻酔科 | 野村 実 | 医療法人社団成和会 西新井病院/病院長 | 財務 |
理事 | 麻酔科 | 澤村 成史 | 帝京大学医学部麻酔科学講座 | 学術(研究/教育) |
理事 | 麻酔科 | 岡本 浩嗣 | 北里大学医学部麻酔科学 | 広報/国際交流 |
理事 | 麻酔科 | 原 哲也 | 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科/麻酔集中治療医学 | 学術(研究/教育) |
理事 | 臨床工学技士 | 赤地 吏 | 帝京平成大学 | 倫理/医療問題検討 |
理事 | 臨床工学技士 | 配野 治 | 千葉メディカルセンター/臨床工学部 | 学術(研究/教育) |
理事 | 臨床工学技士 | 安野 誠 | 群馬県立心臓血管センター/技術部 臨床工学課 | 倫理/医療問題検討 |
評議員 | 心臓血管外科 | 西村 元延 | 医療法人 川崎病院/院長 | 財務 |
評議員 | 心臓血管外科 | 皆川 正仁 | 弘前大学大学大学院医学研究科/胸部心臓血管外科学講座 | 倫理/医療問題検討 |
評議員 | 心臓血管外科 | 新川 武史 | 東京女子医科大学/心臓血管外科 | 広報/国際交流 |
評議員 | 心臓血管外科 | 藤井 正大 | 日本医科大学千葉北総病院/心臓血管外科 | 学術(研究/教育) |
評議員 | 麻酔科 | 田中 克哉 | 徳島大学医学部 | 広報/国際交流 |
評議員 | 麻酔科 | 横塚 基 | 三井記念病院/麻酔科 | 倫理/医療問題検討 |
評議員 | 麻酔科 | 土井 健司 | 東京女子医科大学/麻酔科 | 財務 |
評議員 | 臨床工学技士 | 尾越 登 | 仙台市医療センター仙台オープン病院/臨床工学室 | 財務 |
評議員 | 臨床工学技士 | 吉田 幸太郎 | 大阪大学医学部附属病院/臨床工学部 | 倫理/医療問題検討 |
評議員 | 臨床工学技士 | 高 寛 | 岡山大学病院/臨床工学センター | 財務 |
評議員 | 臨床工学技士 | 堤 善充 | 社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院/臨床工学室 | 広報/国際交流 |
評議員 | 臨床工学技士 | 松井 孝拓 | 高知大学医学部大学院 | 広報/国際交流 |
評議員 | 臨床工学技士 | 東條 圭一 | 北里大学病院/ME部 | 倫理/医療問題検討 |
評議員 | 臨床工学技士 | 長嶋 耕平 | 虎の門病院/臨床工学部 | 学術(研究/教育) |
評議員 | 臨床工学技士 | 後藤 武 | 弘前大学医学部附属病院/臨床工学部 | 広報/国際交流 |
監事 | 麻酔科 | 安田 篤史 | 帝京大学医学部麻酔科学講座 |
学術(研究/教育)委員会 |
学術集会関連、臨床研究、疫学研究、多施設共同研究計画、教育セミナー企画運営。 *学術集会時の【プログラム委員会】はここから派生。 |
広報/国際交流委員会 | 広報活動、ホームページ、国際交流(将来的な海外とのネットワーク構築、国際交流の窓口、海外専門家の招聘)。 |
財務委員会 | 収支計画予算案、短期及び将来的財務計画(企業賛助会員等の招致、広告収入、企業寄附・協賛金募集等)。 |
倫理/医療問題検討委員会 | 倫理的問題、医療安全管理、医療事故関連、コンプライアンス遵守、利益相反、保険医療、薬事関連問題検討、臨床研究IRB審査。 |
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